公開: 2021年11月1日
更新: 2021年11月1日
米国の雇用制度は、職務記述書に基づく雇用契約と、社会的な制度としてのエクゼンプト制を特徴としている。日本社会で一般的な「定年制」はない。エクゼンプト制は、エクゼンプション制度とも言われ、その制度が対象としているのは、労働組合に入らない技術者などの専門職や、管理職に従事している人々である。これらの職に就く人々は、現代の米国企業では大学等で高等教育を学び、学位を取得している人々である。
エクゼンプト制度の対象者は、職務記述書に基づいた雇用契約で職務に従事するため、職務記述書の規定されている給与レンジに基づいて給与が決定される。職務記述書に記載された職務を妥当な範囲で遂行できている限り、企業はその従業員を解雇できない契約である。つまり、企業が営業不振で人員削減が必要になると、非エクゼンプトの従業員に対しては、その数を決めて、レイオフを実施する。レイオフは、最も新しく雇用した従業員から行われる。
エクゼンプト制の対象となっている従業員は、レイオフの対象とはならないため、企業は、「退職奨励金」を準備して、有利な条件での自主的な退職を求めることとなる。この制約から、年齢の高い従業員でも、年齢を理由に解雇することはできない。そのため、特別な理由がない限り、「望む限り、その職に就き続けることができる。」のである。これは、企業にとっては、人件費を増加させる要因にもなるが、職務記述書に記載されている職務を遂行できる限り、雇用を維持すれば良いのである。
大場 充著、「ソフトウェア技術者: プロの精神と職業倫理」、日科技連出版(2014)